片恋キックオフ
「……不安だなあ。
わたし、あと3週間で上手くなれるのかな…」
「上手い下手なんて関係ないだろ。
…いままでの自分の努力をすべて出し切ればいいんだよ」
「うん」
藤宮はふわっと笑った。
つうか、藤宮…瑞姫とかいう名前…今日 初めて知ったし。
なのにサッカーの練習に付き合うなんて、時間の無駄なだけなのに。
俺、なんで教えてんだろ?
だけど、サッカーの楽しさをひとりでも多くの人に知ってもらいたいし。
……まあ、いいか。
「ここのインサイドを使うのは知ってんだろ?
その足を固定したまま、蹴るんだよ」
「…わかった! やってみる!」
確かに下手だけど。
どう見ても運動音痴だけど、一生懸命なら教えがいがある。
「じゃあ、行きまーす!」
ボールはさっきよりも速く回転しながら、藤宮から俺のところに届いた。
「そんな感じ。 あとは、練習するだけ」
「やった! 少し上手くなったかな?」
「…あぁ」
「へへ、城川くんのおかげだねっ」
藤宮はまたふわっと笑った。
……胸がざわつく。なんでだろ。