片恋キックオフ





*****





「わ…。 ……怖い…」





いつもはみんなと部室で話しながらだったけど。
今日は校舎内。





廊下しか電気はついていなくて、真っ暗な教室がたくさんある。
ぶるっと寒気が走る。





真っ暗なのは怖いよ……。





下駄箱をここから見ても城川くんがいる気配がしないし…。
早く来てよ…ひとりは怖い……。





「藤宮」




「———⁉︎ きゃぁあっ‼︎」





背中から聞こえた声に、わたしは悲鳴を挙げた。
足がすくんで、へたりと廊下に座りこむ。





「…俺だから」




「…あ…、城川く…っ」




「裏庭なんかでの練習、バレたら怒られそうだし。 大きな声、出すなよ…」





明らかに迷惑そうな顔。
…嫌われちゃった?
だけど、でも……怖かったんだもん。





「行くぞ」




「う、ん…」





…って、あれ?
た、立てない……。





「早くしろよ」




「う…。 こ、腰抜かしちゃったみたいで…」





「はぁ……。 ほら」




「あ、ありがと…」





わたしの前に差し伸べられた手を掴んで、ゆっくり立ち上がる。





城川くんはちゃんと“男の子”で、手はすごく大きくてしっかりしてる。
ってわたし…。 これじゃあ、手 繋いでるみたいじゃん…!





わたしは立ち上がってすぐに手を離した。
ますます嫌われた……?




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