片恋キックオフ
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「わ…。 ……怖い…」
いつもはみんなと部室で話しながらだったけど。
今日は校舎内。
廊下しか電気はついていなくて、真っ暗な教室がたくさんある。
ぶるっと寒気が走る。
真っ暗なのは怖いよ……。
下駄箱をここから見ても城川くんがいる気配がしないし…。
早く来てよ…ひとりは怖い……。
「藤宮」
「———⁉︎ きゃぁあっ‼︎」
背中から聞こえた声に、わたしは悲鳴を挙げた。
足がすくんで、へたりと廊下に座りこむ。
「…俺だから」
「…あ…、城川く…っ」
「裏庭なんかでの練習、バレたら怒られそうだし。 大きな声、出すなよ…」
明らかに迷惑そうな顔。
…嫌われちゃった?
だけど、でも……怖かったんだもん。
「行くぞ」
「う、ん…」
…って、あれ?
た、立てない……。
「早くしろよ」
「う…。 こ、腰抜かしちゃったみたいで…」
「はぁ……。 ほら」
「あ、ありがと…」
わたしの前に差し伸べられた手を掴んで、ゆっくり立ち上がる。
城川くんはちゃんと“男の子”で、手はすごく大きくてしっかりしてる。
ってわたし…。 これじゃあ、手 繋いでるみたいじゃん…!
わたしは立ち上がってすぐに手を離した。
ますます嫌われた……?