片恋キックオフ
無言のまま星が降りそうな空の下をゆっくり歩いてく。
「え? 正門、こっちだよ…?」
「チャリ持ってくっから。 待ってて」
「あ、うん…」
わたしは歩きなんだけどな。
どうやって一緒に帰るんだろう?
でも…こんな暗いところをひとりで歩くのは怖すぎるから、実を言うとホッとしてたりもする。
「お待たせ」
城川くんはシルバーの自転車を漕いで、わたしの前で止まった。
「乗れ」
「え?」
「いいから、後ろ乗って」
「…へッ? い、いいよ!」
はぁー、と城川くんは今日聞いた中で1番大きなため息を吐いた。
「し、幸せ…逃げちゃうよ?」
「別に。 幸せなんて自分で掴み取るし。
いいから、早くしてくんない?」
『幸せなんて自分で掴み取る』って。
なんか、城川くんらしいような…。
わたしはこれ以上、城川くんを不機嫌にさせないように荷物を城川くんに任せて、後ろの荷台に乗った。