片恋キックオフ
「あ! わたしの家ここ!」
白い家を指差すと、自転車は減速しながら止まった。
わたしはゆっくりと荷台から降りる。
…なんだか、名残惜しい。
「ありがとうね!」
「別に」
「ふふ、口グセでしょ? それ」
「……別に」
「わ、わざと…?」
「違う。 じゃあ、また明日な」
城川くんの口からは『また明日』と紡ぎ出された。
それって…また話しかけていいの?
「『おはよ!』って言うね」
「は?」
「『また』って言ったでしょ?
わたし、城川くんに明日『おはよ!』って言うから!
じゃあ…また明日ね!」
「……勝手にすれば」
城川くんはその言葉を最後に、暗闇の中に消えて行った。
こんな中帰るのはすごく怖いけど、城川くんがいたから怖くなかったもん。
…また、話したいな。
次こそは笑顔が見たいな。