片恋キックオフ
「なぁんだ、ふつうに話せるじゃん!
仲良くしようね? 瑞姫!」
「うんっ」
昨日の夜から不安でそんな眠れなかったりしたけど。
杏里ちゃんがいてくれてよかった…!
こんな子がいなかったら、わたしはクラスに馴染めそうもなかったもん。
「杏里ちゃんは、なに部?」
HRも終わって、1限までの間。
わたしは、まだ席に着いてる杏里ちゃんの背中をトントンと叩いた。
「ん? あたしはねー、女ッカー!」
「………じょっかー?」
「あ、女子サッカー部だよ!」
女子サッカー部なんてあるんだ。
しかも、杏里ちゃんすごいなあ…。
わたしなんて、球技だけじゃなくて運動全般的に苦手だもんなあ。
「すごいね! かっこいい!」
「……そのことなんだけどね?
あたし、瑞姫にいきなりだけど、お願いがあるの…」
急に不安そうに聞いてくる杏里ちゃん。
なんのお願いなのかな?
「なあに?」
「1ヶ月後の10月に、ライバル高校との2年生のみの練習試合が予定されてるんだけどね?
ちょうど、瑞姫と入れ替わりって言うか…1学期が終わるのと一緒に、メンバーがひとりいなくなっちゃったの」
わたしはコクコクと頷きながら、杏里ちゃんの話を聞く。
「それでね、顧問はライバル高校に負けたくないし、練習試合を辞めるってのも嫌みたいで。
あたしらでもうひとりのメンバーを探してるんだけど…。
1ヶ月限定でいいの! 瑞姫、女ッカー入らない?」
「……へッ?」
本当にいきなりの話で、わたしは変な声をあげてしまった。