片恋キックオフ
それにしても嬉しい。
だから、ここ何日かでもっともーっと上手くなった姿を…城川くんに見てほしい。
「じゃあ、もう1本やってみて。
もう少しだけ良くしたほうがいいから」
「うんっ」
少しずつ日は沈んでいく。
夕日が沈んで、空が藍色に染まるまでが。
……城川くんとふたりきりでいられる時間。
もうタイムリミットが迫ってくる。
わたし、城川くんと一緒にいることが…こんなにも嬉しいのはなんでかなあ?
この頃、胸が変。
城川くんと話すだけで、波打つ音が速く聞こえるんだ。
「藤宮!」
「…あ、ごめん…!
いまからやりますっ!」
城川くんのことで頭がいっぱいで。
いまはあと少し経つとある練習試合のことを考えなきゃなのに。
……わたしはさっきよりも、城川くんの言葉を意識してボールを蹴る。
いまはただ。
練習試合のことだけを考えるようにする。
———このシュートを決められるように。