片恋キックオフ
*瑞姫*
「明後日の練習試合のポジションを決めたから。
実李、みんなに言って」
顧問の女の天田(あまだ)先生が、実李を2年生の輪の中から呼んだ。
実李は手にコートの書かれたホワイトボードを持って、みんなを見回す。
「ゴールキーパー、唯」
「はい」
唯はいつも部活をやるとき、みんなの輪から外れてキーパー練習をしてたから。
キーパーかなあって予想はついていたけど。
他の子が普段、どこでプレーをしてるかなんて知らない。
「じゃあ後ろから。
左サイドバック、桃子」
「はい」
「順番に未来、さくら、有彩」
「「「はい」」」
みんなは元気そうに返事をしていく。
わたしの名前は…まだ、呼ばれない。
「左サイドハーフ、七海」
「はいっ」
「ボランチ、杏里。 トップ下、春名」
「「はい」」
「そして右サイドハーフが、わたし」
ここで呼ばれなかったから。
もう…残りは、トップしかない。
わたしと蘭で…トップか…。
「そして、トップ。
左から、蘭。 …瑞姫」
「はい!」
「は、はい…」
うぅ…。どうしよう。
わたしになんか務まらない気がもっもっと大きくなっていく。