片恋キックオフ
「ほーら、蘭! 城川くんじゃん!」
「ちょっと…唯!大声出さないのっ」
ふたりのそんなやり取りが耳に届く。
え…まさか。蘭は……城川くんが好きなの?
胸にモヤがかかる。
モヤモヤしてなんだかわけのわからない気持ちになる。
「好きなんじゃなかったっけ?」
唯が蘭にそう聞いた。
ダメ…。そのあとを、聞きたくないよ。
だけどわたしは足が動かなくて。
蘭の言葉を耳を澄まして待っていた。
「はあ?違うし!
あたしの彼氏の顔と似てるってだけじゃん!」
「あ、そうだっけ?」
「唯の勘違いでしょ! ばかっ」
そ、そうなんだ。
じゃあ…蘭は、城川くんが好きってわけじゃないんだよね?
………よかったあ。
ってわたし、なんでこんなにホッとしてるんだろう…?
蘭が城川くんのこと好きなわけじゃないって知って。
さっきまで胸にはモヤがかかっていたのに、もう…どこかへ消え去った。