片恋キックオフ
「……!……きっ。 ———瑞姫ってば!」
耳元で聞こえた大きな声。
わたしは思わず『きゃ⁉︎』と叫んでしまった。
「もう、サッカー部ずーっと見てたけど。
好きな人でもいるの?」
杏里は少しニヤニヤしながらそう聞いてきた。
気がついたら、蘭も唯もいなくて。
2年生は1年生が終わるのを、パス練とかをして待っているみたい。
「す、好きな人…は、いないよ?」
というか、好きな人って…。
———好きって気持ちがよくわからない。
「えぇー? だってさあ、ずっと見てたのに?」
「わ、わたし…そんなに見てた?」
「うん。
で、好きな人はいないの?」
「い、いないよ…!」
杏里は『なーんだ』とつまんなさそうに言った。
「ほら、ミニゲーム始まるよ?」
「あ、うん……っ」
まだ目の裏に映る、城川くんのプレーの姿。
すっごくかっこよくて…。
やっぱり、キラキラ見えた。
一生懸命にボールを追う姿が、なんだか眩しくて。
胸がドキドキしてる………。