片恋キックオフ





「わ、わたしは…運動音痴だし。

他にいないの…?

部活入ってない子とか……」




「んー。 2年生で帰宅部の子 全員に聞いてまわったよ?

だけど、みんな『ダメ』の一点張り。

他の部活から引っこ抜けないしさ。


それで、今日…女の子の転校生が来るって言うから、メンバーで話してたの。

『その子しかいない!』って」




「えぇ…。

OKしたいけど、わたしなんか足を引っ張るだけだもん…」




「1ヶ月限定だよ!
少しでもボールを蹴るぐらいできたらいいの! ね?お願いッ!」




「……あ、杏里ちゃん…」





どうしよう。





杏里ちゃんは顔の前で手を合わせて言った。





でも本当に苦手だし。
だけど、困っててしかもわたしを頼りにしてるって…。





「部活、見に行ってもいい?」




「え?」




「す、少しだけなら…。

1ヶ月だけなんでしょ?
杏里ちゃん、わたしと友達になってくれたし。

………想像以上に下手だけど…」





「いいよいいよ!
わ! メンバーに報告してくるっ」




「……え…」





杏里ちゃんはダッシュで教室から飛び出して行った。





は、はや…!
でも、わたしなんかでいいのかな。





でも、どうせ蹴るだけだよね?





わたし、困ってる人を見過ごせないし…。




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