片恋キックオフ
唯が見てる方向をみんなが見る。
もちろん、わたしも……。
だけどなかなか見つけられない。
そういえば、昨日の金曜日は練習しなかった。
放課後に城川くんのもとにいったら『大会前だから、なし』って言われて。
城川くんはすぐ帰っちゃったし…。
というか、今日はわたしが『来て』って言ったんだ。
本当に来てくれたんだ…!
「……いた…」
人混みの中、スマホを片手にきょろきょろと周りを見ている城川くんが。
「ねえ、瑞姫。
さっきからバッグの中から、マナーモードのバイブ聞こえるよ?」
「え?本当?」
杏里に言われ、わたしはエナメルのポケットからスマホを取り出す。
画面にうつったのは、SNSで城川くんからのメッセージがきてるという通知だった。
SNSのトーク画面を開くと。
【話したいことある】【どこ】という、言葉だけじゃなくて文字もどこか冷たいメッセージが来ていた。
「杏里!
わ、わたし…ちょっと行ってくる!」
「え? 行くってどこに⁉︎」
「城川くんのところっ」
他のみんなも、わたしと杏里のやり取りが聞こえて見たいで『え⁉︎』という声が聞こえたけど。
わたしは城川くんのところに人混みを掻き分けて走って向かう。