片恋キックオフ
「城川く…っ」
城川くんは向こう側を向いてしまったけど。
わたしは名前を呼びながら背中をぽんぽんと叩いた。
「いた」
城川くんはゆっくりと振り向いた。
わわ、私服だ…かっこいい。
かっこよくて、なんか顔が見れなくて。
わたしは少し俯く。
「えと、話って…?」
「大したことじゃねぇけど。
『頑張れ』って言いたかっただけ」
チラッと城川くんの顔を見ると、城川くんの頬は少し赤くなってた。
え? …なんで?恥ずかしいの?
よくわからないけど、なんだか新鮮で。
わたしにしか見られない顔なのかなあって思うと、嬉しくなる。
「ありがとう!
うん、がんばってくるね…!」
「俺が教えたこと思い出せば、人並みにはできると思うから」
「うん!」
「あと、もしチャンスがあったら。
とにかく、ゴールに向かって蹴ればいいと思う」
「そうだよね…。
わたし、トップだもんね。
も、もしもチャンスがあったら…。
城川くんに教わったように蹴ってみる」
わたしがそう言うと、城川くんは『あぁ』と言って、少し微笑んだ。
「し、城川くんは…笑ってるほうがいいと思う!」
「…は?」
つい口から出た言葉。
城川くんはそれに冷たく返してきた。
わ!これじゃ、わたし…城川くんのこと好きみたいじゃん。
好き……みたい…。
い、いや…そんなことない。
ただ城川くんのことが気になるだけ、だもん。
「ごめ…。 気にしないで!
じゃあ、行ってくるね」
「頑張れよ」
「ありがとうっ」
わたしは『またね』と笑顔で手を振って、みんなのところに戻る。
どうしてだろう。
城川くんの『頑張れ』はすごくやる気がでるんだ。
なんだろう、この気持ち……。