片恋キックオフ
「ちょっと、瑞姫〜?
いつから城川くんと仲良くなったのよー」
みんなのところに戻ると、メンバーの中で1番ミーハーな春名がわたしのところに寄って来てニヤニヤしだす。
「え? そ、そんなことないよ…!」
「わぁー、瑞姫ってば顔真っ赤だよ?」
次はさくらがわたしのところに来てわたしの顔を覗いた。
え?顔が真っ赤…⁉︎
な、なんでだろ……。
「3人ともー! 行くってー!」
少し離れたところから蘭の声が聞こえて、わたしたちはみんなのところに向かう。
蘭のおかげで、これ以上聞かれなくてよかった…。
「瑞姫?」
「ん? なあに、杏里」
2年生を先頭にして1年生がついていく。
わたしと杏里はその1年生の後ろを歩いていく。
「もしかしてだけど…。
サッカー教えてもらうようになってから、仲良くなったの?」
少しニヤニヤしながらも、控えめに聞いてくる杏里。
うん、あのふたりの聞き方よりこっちのほうがいい…。
あんな質問攻めされたら答えられないもん。
「う、うん。 そうなの…」
「好きなの?」
「へ? ……えぇっ⁉︎」
1年生が振り向くほど、わたしは大きな声をあげてしまった。
なにこれなにこれ…。
わたし、図星みたいじゃん。
「好きなんだ?」
「ち、違うよ…!
てゆか、『好き』って感情がわからないもん……」
「そっか!
じゃあ、気にはなってるのね?
顔、すごく嬉しそうだよ」
「え!
わ、わたし…そんなに顔に出てる?」
そう聞くと、杏里は当然のような顔をしながら『うん』と頷いた。
「確かに…気にはなってるのかも。
城川くんね?冷たいのに、たまに笑うの。
みんなが見たことない顔をわたしだけ見れてるのが、すごく嬉しい」
「ふぅん、そっか!」
杏里はにこっと笑った。
「瑞姫は瑞姫らしく進めばいいよっ」
「うん!」
そんな杏里にわたしも笑顔を返す。
頭はまた城川くんでいっぱいになっちゃったけど…。
いまは…サッカーのことだけを考えたい。
「杏里!
頑張ろうねっ」
「うん! 1ヶ月の間でやってきたこと、出し切ろうね!」
わたしは強く頷いた。
頑張ろう。自分らしく。
仲間を信じて、最後まで戦う。
最後は負けても勝っても…笑えるように。