片恋キックオフ
*****
「これから練習試合を始めます。
きをつけ、礼」
相手高校の審判の人の声に、わたしたちは『お願いします』と言いながらお辞儀をして。
前にいる人と握手を交わした。
そして半分のコートの真ん中に集まって円陣を組む。
「みんな、頑張ろう。
瑞姫と一緒に戦うのは、最初で最後かもしれないんだから、ね?」
実李の声にわたしたちは顔を合わせて笑顔を見せ合う。
みんなにピッタリ合う空みたいな青のユニフォーム。
わたしにも…合ってるかな?
技術的にはまだまだだけど。
存在としてここにいる。
みんなとコートに立っている。
実李はみんなの顔をひとりひとり見て。
顔を地面に向けた。
「絶対勝つぞ!!」
「「「オー!」」」
大きな団結した声が、大きな空に響き渡る。
みんなはそれぞれ思い思いのことを考えながら、笑顔でそれぞれのポジションに別れていく。
うわ…心臓がドキドキしてる。
すごく緊張してるよ…。
すぅーはぁーと深呼吸をしながら、わたしはトップの位置に着いた。
…城川くん、見てるかな?
わたしはまばらにいる観客の中を探す。
だけど見つからない…。
「瑞姫!来て!」
ボールはわたしたちからで。
蘭は円の中に入っていた。
そっか、わたしと蘭でやるのか…。
「頑張ろう」
「うん」
力強く頷く。
すると、ピーッというホイッスルがグラウンドに鳴り響いた。
———キックオフ。