片恋キックオフ
違う女の子がゴール近くにいるトップの子に大きなパスを出した。
その女の子が取る前に、前にいたさくらがヘディングをして跳ね返した。
そのボールを次は実李が取って、上がっていく。
わたしと蘭も実李の様子を伺いながら、上がる。
空いてるところに行かなきゃ。
実李からのパスを誰かが繋がなきゃ。
きっと、いまわたしたちの高校にチャンスがきてるもん。
「実李!」
ちょうど蘭の周りは空いていて、実李は蘭にパスを出した。
いままで上がっていた女の子たちは、必死に下がってくるけど。
蘭の足の速さには勝てなくて。
蘭は力強くゴールに向けてボールを蹴った。
ボールはゴールキーパーの手に当たって。
誰もが『あぁ』と落胆の声をあげたけれど。
ボールはそのままゴールの中に入って行った。
———ピーッ
「入った…」
みんなで繋げたボールはゴールに入って。
蘭のところにわたしは駆け寄る。
「蘭! ナイシュー!」
「えへへ、ありがとう!
でも、まだまだこれからだよ!」
そう言った蘭は、時間を刻む時計を指差した。
「まだ、前半…16分か…」
まだまだある。
………いまはまだ始まったばかり。