片恋キックオフ
「下がってーー!」
その言葉が聞こえてもっと速く走る。
このままじゃ、ダメなんだよ。
入れられちゃったら入れ返さなきゃいけなくなっちゃう。
だけど相手選手が蹴ったボールはすごく速くて、気がついたらゴールの中にシュッと入っていた。
「アヤ〜! ナイッシュー」
相手チームはひとりの女の子を囲んでキャーキャー叫んでいる。
…もうダメなのかな。
勝てないのかな。
「みーずき!
悲しんだ顔なんてしちゃダメでしょ!ばか!」
いきなり暴言が聞こえてきたかと思ったら、蘭にコツンと頭を小突かれた。
「で、でも…」
「まだ始まったばかりだよ⁉︎
いまから諦めてどーすんのよっ」
「…そう、だよね…!」
「ふたりで攻めよう?
遠慮なんてしないで、どんどん突っ走ろうよ!」
そんな笑顔な蘭の言葉に笑顔で強く頷いた。
すぅーはぁーと息をしながら青い空を見上げる。
まだまだ頑張れる。
まだまだ試合は始まったばかり。
「…よし!」
両手でパシンッと頬を叩いて、わたしはセンターサークルの中に入って。
センターマークの上に乗るボールを、ちょんっと蹴った。