片恋キックオフ





*****




後半開始25分———。
試合終了まで、あと…5分。





「春名! そこマークして!」




「ミサキ!上がってー」




「アヤ!」




「さくら! そこ空いてる!」





誰が声をあげてるのかもわからなくて。
試合終了まであと半分と少しくらいになってきた。






…まだ、1対0のまま。
このまま逃げ切りたいのに…。





相手はひとりトップが強い子に選手交代をしてしまって。
圧倒的に攻められて。





わたしたちは半分側のコートでしかプレーをしなくなってきた。





さっきからシュートは何本も打たれてるのに。
唯は全部止めている。





どうにかして、ボールを向こうのコートに持って行きたいのに。





もっと動いてボールを取りに行きたいのに。





体力がなくて、体はすごく重い。
少し動くだけで息が上がってしまうほどだった。





「まだまだ諦めないで!頑張ろう!」





わたしは気がついたら大きな声で叫んでいた。
みんな少し驚きながらも『はい!』と返事をしてくれた。





負けたくないもん。





練習試合だからって…勝ちたい。





「有彩! ボール出して!」





ゴールラインの端で有彩と相手の子が1対1で戦っていたけど。





おそらく、唯の言葉で。
有彩はラインの外へとボールを出した。




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