片恋キックオフ
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後半開始25分———。
試合終了まで、あと…5分。
「春名! そこマークして!」
「ミサキ!上がってー」
「アヤ!」
「さくら! そこ空いてる!」
誰が声をあげてるのかもわからなくて。
試合終了まであと半分と少しくらいになってきた。
…まだ、1対0のまま。
このまま逃げ切りたいのに…。
相手はひとりトップが強い子に選手交代をしてしまって。
圧倒的に攻められて。
わたしたちは半分側のコートでしかプレーをしなくなってきた。
さっきからシュートは何本も打たれてるのに。
唯は全部止めている。
どうにかして、ボールを向こうのコートに持って行きたいのに。
もっと動いてボールを取りに行きたいのに。
体力がなくて、体はすごく重い。
少し動くだけで息が上がってしまうほどだった。
「まだまだ諦めないで!頑張ろう!」
わたしは気がついたら大きな声で叫んでいた。
みんな少し驚きながらも『はい!』と返事をしてくれた。
負けたくないもん。
練習試合だからって…勝ちたい。
「有彩! ボール出して!」
ゴールラインの端で有彩と相手の子が1対1で戦っていたけど。
おそらく、唯の言葉で。
有彩はラインの外へとボールを出した。