片恋キックオフ
ピーッとホイッスルが鳴って、相手チームがコーナーキックの準備をしている。
仲間も相手もほぼみんながゴールの前でマークしたり空いてるところに移動をしたりしている。
だけどわたしは、そこから少し離れたところにいる。
可能性にかけるしかないけど。
…もしボールがこぼれた時。
このほうがすごく有利だと思って。
チャンスは待たないで自分からだって作れるもん。
蹴ったボールを相手選手が取ったら、向こうが優勢。
だけどわたしたちが取ったら、こっちが優勢だよね…。
……コーナーキックをする相手選手は助走をつけてボールを思い切り蹴飛ばした。
孤を描きながら飛ぶボールは、人混みの中へと消えたかと思ったら。
ポーンとこっちに跳ね返って来た。
誰かがヘディングしたんだ…!
「瑞姫!」
これは桃子の声…?
桃子がヘディングしたのかな?
そう思いながら、わたしはボール終着点を予想しながら動く。
少しずつ何人かがボールが落ちて来るのを止まって待つわたしのほうに駆けて来る。