片恋キックオフ
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「ただいま〜…」
新しい真っ白な家の玄関のドアを開けると、パタパタと走る音が聞こえて前を向くと。
わたしの顔を見てホッとしたのか、走ってきたママはため息を吐いた。
「ん? ママ、どうしたの?」
「瑞(みず)ってば、なにかあったのかと思ったのよ〜」
「え? あ、部活の見学行ってたの…」
「部活⁈
しかも、すごい汗かいてるじゃない。
なに部なの? …どう見ても、美術部に行ったわけじゃなさそうだし…」
「…あ。 いろいろあって、1ヶ月限定で…女子サッカー部に入ることになりました」
わたしがそう言うとママは口を金魚みたいにパクパクさせた。
うん、予想通り…。
ママだってわたしが運動音痴なことは知ってるもん。
「み、瑞が…女子サッカー?!
あんた、本当に言ってるの?」
「…ママが言ってんじゃん。
『困ってる人がいるなら助けなさい』って。
10人しかいなくて、1ヶ月後の試合までなの」
「……あら、そうなのね。
まあとりあえず、夕飯できてるわよ」
「はあい」
わたしは荷物を置きに部屋に向かう。
今日は見学だけだったけど。
明日からは…練習が始まる。
お古って聞いたけど、3年生の先輩からもらったスパイクはかなりキレイだった。
こういうのを見ると、もっとやる気でる。
…でも本当にわたしなんかにできるのかなあ?