片恋キックオフ





*****





「ただいま〜…」





新しい真っ白な家の玄関のドアを開けると、パタパタと走る音が聞こえて前を向くと。





わたしの顔を見てホッとしたのか、走ってきたママはため息を吐いた。





「ん? ママ、どうしたの?」




「瑞(みず)ってば、なにかあったのかと思ったのよ〜」




「え? あ、部活の見学行ってたの…」




「部活⁈

しかも、すごい汗かいてるじゃない。

なに部なの? …どう見ても、美術部に行ったわけじゃなさそうだし…」




「…あ。 いろいろあって、1ヶ月限定で…女子サッカー部に入ることになりました」





わたしがそう言うとママは口を金魚みたいにパクパクさせた。





うん、予想通り…。
ママだってわたしが運動音痴なことは知ってるもん。





「み、瑞が…女子サッカー?!

あんた、本当に言ってるの?」




「…ママが言ってんじゃん。

『困ってる人がいるなら助けなさい』って。

10人しかいなくて、1ヶ月後の試合までなの」




「……あら、そうなのね。

まあとりあえず、夕飯できてるわよ」




「はあい」





わたしは荷物を置きに部屋に向かう。
今日は見学だけだったけど。
明日からは…練習が始まる。






お古って聞いたけど、3年生の先輩からもらったスパイクはかなりキレイだった。





こういうのを見ると、もっとやる気でる。
…でも本当にわたしなんかにできるのかなあ?




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