片恋キックオフ
*瑞姫*
白と黒のボールはくるくる回転しながら、青空の下を弧を描きながら飛んでいく。
そのボールの終着点を、誰もが見つめていた。
わたしはゴクンとツバを飲み込む。
これで入らなかったら…。
そんなことは考えたくないけど。
考えてしまうんだ。
ボールの動きがスローモーションのように感じる。
わたしは強く目を瞑って。
『入れ』と何度も心の中で唱える。
「きゃぁーっ! 瑞姫!」
急に周りがうるさくなって。
耳元で杏里の声も聞こえて。
わたしはそっと目を開けた。
「……え?」
「入ったんだよ、ゴールに!」
興奮気味で抱きついてくる杏里。
……入った? ゴールに? ボールが?
なにもかもが信じられなくて。
頭が現実に追いつかない。
「瑞姫、すごいよ!」
「ほ、本当に…入った、の?」
「うん!」
杏里の笑顔の返事に、わたしは少しずつ理解できてきた。