片恋キックオフ
———ピーッ
試合再開のホイッスルが鳴って。
相手は思い切り攻めて来た。
あと、5分だから。
絶対に守って見せる…!
「瑞姫! マークつけて!」
「ナツメ!空いてるっ」
たくさんの声が飛び交う中。
わたしは蘭の言葉を耳で拾って、近くにいた女の子にマークについた。
「アヤ!」
「そこ空いてる!」
「ラスト攻めてー!」
相手チームの声なのかな。
すごく焦ってる。
わたしたちも同じくらい焦ってる。
最後の最後で引き分けにはなりたくないもん。
練習試合だからって“試合”には変わりないから。
勝つ意味があるんだ。
ボールの奪い合い。
取ったり取られたり。
激しい戦いになってきた。
———ピーッ
相手選手がホイッスルとともに、ゴールに向かって思い切り蹴ったけど。
ボールはゴールから逸れた。