片恋キックオフ
「たかが練習試合なのに泣きすぎよ」
そう冷たく言うのはもちろん蘭。
たかが練習試合じゃなくて、わたしにとっては初試合だし…。
「だってぇー。
すっごく嬉しくて……」
「あたしもだよ。
すごく嬉しい」
蘭はにっこり笑った。
———残るか辞めるか、勝つか負けるかで左右される試合。
勝ってよかった。
仲間と戦えてよかった。
「わたし、まだ…残ってていい?」
「え? 残ってくれるの⁈」
杏里の驚いたような声に、わたしは涙を拭って笑顔で『うん!』と答えた。
「みんなが、いいなら…」
「いいに決まってるでしょっ」
「本当? そ、それならよかったあ。
わたし…みんなと戦えてすごく楽しかった。 また一緒に戦いたいもん」
「あたしも、瑞姫と戦えて楽しかった。それはみんなも一緒だよ?」
「ありがとう…っ」
また出てきそうになる涙をゴシゴシと拭って笑う。