片恋キックオフ
審判の声でみんなで整列してお辞儀をして。
相手チームと握手を交わす。
「あなた、公式試合には出てなかったよね?」
目の前のショートヘアーの女の子は真顔で言う。
少し迫力があって怖い…。
「は、はい…。
この練習試合のために入ったんです」
「あたしさ、またあなたと公式試合で戦いたい。
入ったばかりにしてはすごく上手なんだね」
「は、はい!
わたしも…できたら戦いたい!」
女の子はもうベンチに戻ろうとしている子に『サツキ!』と呼ばれて、帰っていった。
…サツキ、ちゃん。
そういえばプレーもすごく上手いなあって思ってた。
そんな子に『上手』だなんて言われてすごく嬉しい…。
「瑞姫! 行くよ」
「あ、うん!」
杏里に笑顔で呼ばれて、わたしは一緒にベンチに向かう。
まだ少し信じられなくて。
わたしなんかがゴールを決めたことだって信じられない。