片恋キックオフ
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オレンジ色に染まる教室。
わたしは机の上で寝てる城川くんを見つめている。
…なんだか、初めて話したときを思い出す。
「……好き…」
この声が、この気持ちが、城川くんに届けばいいのに…。
はぁとひと息吐いて、わたしは城川くんの背中をぽんぽんと叩いた。
「…し、城川…くん」
だけどやっぱり、返事はない。
………湊、くん。
そう呼びたいけど恥ずかしいし。
迷惑だなんて思われたら嫌だな。
わたし、すごく欲を持ってるんだ。
話したいし。笑顔を見たいし。名前で呼びたいし。
自分がこんなんだったなんて初めて知った。
「城川くん!」
「……ん…」
城川くんはむくっと起き上がって。
とろーんとした目をこすった。
「……なに?」
しばらくわたしの顔を見てから、つぶやくようにしていった。
「城川くんに話したいことがあるの」
告白するわけじゃないけど。
少し緊張する………。
「なに?」
「わたし、サッカーを続けることにしたってこの前…言ったよね?」
あの練習試合の日。
帰り際に城川くんに『ありがとう』という言葉と続けることを伝えたんだ。
「あぁ」
「それで…、もっと上手くなりたくて。
もしよければ、これからも教えてくれないかな…なんて」
城川くんはなにも言わないで、ぼーっとわたしの顔を見つめる。
そ、そそそんなに見つめないでよ…。
すごくドキドキしてるんだから。