片恋キックオフ





*****





オレンジ色に染まる教室。
わたしは机の上で寝てる城川くんを見つめている。





…なんだか、初めて話したときを思い出す。





「……好き…」





この声が、この気持ちが、城川くんに届けばいいのに…。





はぁとひと息吐いて、わたしは城川くんの背中をぽんぽんと叩いた。





「…し、城川…くん」





だけどやっぱり、返事はない。





………湊、くん。





そう呼びたいけど恥ずかしいし。
迷惑だなんて思われたら嫌だな。





わたし、すごく欲を持ってるんだ。
話したいし。笑顔を見たいし。名前で呼びたいし。





自分がこんなんだったなんて初めて知った。





「城川くん!」




「……ん…」





城川くんはむくっと起き上がって。
とろーんとした目をこすった。





「……なに?」





しばらくわたしの顔を見てから、つぶやくようにしていった。





「城川くんに話したいことがあるの」





告白するわけじゃないけど。
少し緊張する………。





「なに?」




「わたし、サッカーを続けることにしたってこの前…言ったよね?」





あの練習試合の日。
帰り際に城川くんに『ありがとう』という言葉と続けることを伝えたんだ。






「あぁ」




「それで…、もっと上手くなりたくて。

もしよければ、これからも教えてくれないかな…なんて」





城川くんはなにも言わないで、ぼーっとわたしの顔を見つめる。





そ、そそそんなに見つめないでよ…。
すごくドキドキしてるんだから。




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