片恋キックオフ
*湊*
『……好き…』
昨日の夕方のそんな藤宮の言葉が頭から離れないまま、俺はチャリを漕ぐ。
それは、俺のこと…?
いつもなら女子に『好き』とか言われて、すげぇ迷惑だったのに。
…そんなこと思わない。
むしろ、本当に俺に言ったのかがすげぇ気になる。
昇降口に着いて、俺はローファーから中履きに履き替えようと、下駄箱を開いたら。
中に白い封筒が入っていた。
「湊、またラブレター?」
聞き慣れた声が真後ろから聞こえて。
俺はため息を吐いた。
「渓人(けいと)、覗くなよ」
同じクラスの沢口(さわぐち)渓人は茶髪をクシャクシャしながら心をこめずに『ごめん』と言った。
渓人とは小学校から友達で、いまもその関係は続いてる。
そして俺が唯一、心を許せる相手。
「また断るのかよ〜?
って、ちょー可愛い子じゃん!これ!」
渓人は【中林 ゆな より】という名前を指差して大きな声を挙げた。
…誰だし、聞いたことねぇ。