片恋キックオフ
「んで、話逸らすなよな?
好きなわけ?」
「…さあな」
俺だってしらねぇし。
わかんないし。
…ただ、藤宮が気になるだけで。
確かに最初はお世辞でも『上手』だなんて言えないくらい下手だったのに。
あんなにも上手くなったのは、俺が教えたからじゃなくて。
藤宮自身の努力だと思う。
すっげぇ一生懸命なんだな、って思った。
練習試合が終わったからもうふたりで練習することはないと思ったけど。
…いつも成功したら笑顔になる藤宮が見たいから。
藤宮がまた教えてと言ってくれて、なんだかよかったという気持ちになるんだ。
「湊? いかねぇーの?」
立ち止まる俺を不思議そうな顔で見る、渓人。
「いま行く」
白い封筒をバッグにしまって。
俺は急かす渓人についていった。