逢って、愛して
「あぁー……会いたい……」
「は?」
朝橋県立高校。
県内トップクラスの敷地と就職率を誇る、言わば「就職校」。
ここに普通科は無く、農業科、農業機械科、造園デザイン科と家政科、そして私が所属する被服デザイン科がある。
農業科があるだけあって、朝から鶏が元気良く鳴いている。
「…何?どしたの」
「会いたいなーって、彼氏さんに」
「あぁー、あのTwitterの〜…」
眠たそうに欠伸をしながら私の話を聞く湯浅光樹。
クラスどころか学科で唯一の男子生徒。
私と席が前後なため、仲良くしているのだ。
「会えるのは最低でも来年なんでしょー?頑張れぇ〜」
学科で唯一の男子でハーレムじゃないか!と思っていたが、この男は既に中学から付き合っている彼女が居るらしい。
なんだコイツリア充め!と思っていたが、彼氏が出来て若干緩和された。
「ってかさ、普通不安になるくない?一度もあったことない上に遠距離でしょ?」
「うん、まぁ…」
「遊びとかさ、騙されてる可能性の方が強いじゃん」
「うるさい…分かってるよ…」
はぁ、とため息をつく。
可愛い、とか好きとか、沢山言ってくれている。
しかしそれが逆に不安になってしまう。
だから、早く。
「…会いたぁい…」