逢って、愛して
いっそ、会って騙されて振られた方が清々しい。
いや振られる前提にするなよ自分。
頬杖をついてまたもため息をつく。
何度目だ、と思いながらもチャイムが鳴り、数学教師が教室に入って来た。
「はいじゃあ始めましょー」
「起立」
ガタガタと一斉に立ち上がる五月蝿い音が教室内に響く。
礼、と声がして皆が「お願いします」と言って座る。
早く学校終わらないかな。
早く、翔也さんと話したい。
あぁでも今日被服の居残りがあるんだ…。
何故この夏が終わりそうな時期に浴衣を作るのだ、2年の最初から作れば夏までに間に合って着れそうなのに。
何度目になるか、もう忘れてしまったため息を、もう一度ついた。
早く、話したい。