私の楽園。君の終焉、
凝視しすぎていたのか目線を下した京極と目が合う。
微かに柔らかな笑みを浮かべた京極に本能的な恐怖を感じて身震いをする。
アイツの眼がたまらなく恐ろしい。そう、まるで獲物を狙う肉食獣の様な鋭い眼光を持つ目。
上っ面だけの笑顔の下に奴は何かを隠している。私の違和感は証拠を得て確信へと変わった。
その後数分間続いた質問の時間は終わり、先生が京極の席を探す。
どうやら入学は決まっていたが手続きと帰国に少々戸惑い、今日満を持しての登校だったらしい。
どうりでこのクラスは奇妙なところに空席がある。
それが私の隣でなければなんら困りはしなかったのだが。
「おお、教卓に近いな。それに隣は宇佐美じゃないか。得したな。」
着席を促した先生。京極は席に着くとエナメルのスポーツバックを机の隣に置き私の方を向く。
「えっと、君の名前を聞いても良いかな」
「宇佐美梨理です。よろしくね。」
出来るだけ自然に自己紹介をすると先生が思い出したように私を見て
「ああ、宇佐美。コイツ教科書まだ来てないから見せてやれな。授業の内容もお前なら解説できるだろ?」
仕組まれた罠か。そう叫びそうになる。出来すぎたシナリオ上を進む物語の登場人物の気分だ
しかし机を寄せてくる京極を無下に扱うわけにもいかないので出来るだけ柔和な笑顔を浮かべた。