桜色の手紙
夏先輩だけでなくて、空(そら)先輩というもう一人のパーカスの先輩もいろんなことを教えてくれた。
「先輩、シンバルってどうやったら上手く出来るんですか」
「あー…シンバルについては空に聞くのがいいんじゃないかな」
「ん?どしたー?」
そう言って軽く微笑んでくれた、美波空見子(みなみくみこ)先輩。空見子、という漢字が珍しいから、そこを取って空と呼ばれているらしい。
美しい波と、空を見る子。そんな綺麗な名前にふさわしい、優しい先輩だった。
シンバルとティンパニーとバスドラが得意で、その3つはいつも空先輩に教えてもらってた。
彼女は痩せていて、明るくて、いつも笑っていた。テンションが上がると声がワントーン高くなって、それがまた可愛かった。
夏先輩と違って、空先輩は「あや!」って呼んでくれたっけ。
でも私は彩芽って呼ばれる方が嬉しいのだけど。