桜色の手紙


カタンコトン、カタンコトン、
電車の揺れに伴って、手にしている教科書も微かに揺れる。

高校生なんだから少しの時間も有効に使いなさい、と先生に言われてから、毎朝電車に乗ると私はすぐに教科書を開く。

特に数学は何回も何回も読まないと分からない。文字を噛み砕いて、意味をつかんで、理解する。学校では問題を解いて、自分のものにする。その繰り返し。

世界史は声に出して読まないと全く意味がつかめないから、電車では勉強できない。夜寝る前なんかに2、3ページずつ読んでいる。



高校生、か。



気付けば受験が近づいて、気付けばここの学校に合格して。
綺麗な海の見える街の小さな家に引っ越して、高校生なのに一人暮らしが始まって、たまに隣の家に住んでいる和哉(かずや)が来てくれて。




お母さんもお父さんもいないのに、なんで私は誰にも助けてもらえなかったのだろう

なんてことはすぐに忘れてしまった。






電車のアナウンスが、最寄り駅に着いたことを知らせる。
教科書を鞄にしまって、ゆっくりと降りた。



駅を出て5分も歩けば、学校に着く。
休日だというのに、人が多い。みんな、私と同じように部活に来てるのだろうか。

そんなことを考えながら、今日も音楽室へ足を運ぶ。












< 6 / 18 >

この作品をシェア

pagetop