手をのばす
想いののこり
グラスの中で氷がカチリと音を立てた。

琥珀色の液体の上に、うっすらと溶けた氷が浮かんでいる。


溶け出した澄んだ水は、やわらかくゆがんでグラスの底へと落ちてゆく。



暗いバーのカウンターで、ふっと息をついた。

奥のボックス席には似たような雰囲気を持った女二人。

声を落として話し込んでいる。


静かな店だから、場をわきまえているのだろうけれど、時々我慢できない、という風に声を立てて笑いあう。


あまり垢抜けてなくて、服も髪も同じように見える二人連れだった。



ねえ、似たような人だから仲良くなったの?


それとも仲良くなったから、似たような人になったの?


もし、どちらかに先んじられたら、そのときはどうなるの?



心の中で彼女たちに尋ねた。


ふと窓の外に目をやると、小さな灯りにうっすらと照らし出された街路樹が見える。

銀杏が黄金のように、明るく輝いていた。


時折冷たそうな風に乗って、そっと舞ってゆく。
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