手をのばす
「タチ悪いなあ・・・わたし」

ベッドに寄りかかりながら、一人つぶやいた。


沙耶は今頃箱根の空の下か。


新しい友達と、きっと気を使いながらも楽しくやっているのだろう。

どんな旅館だろう?

きっと露天風呂があって、おいしい料理が並んで、お酒を飲んで。


ひとりそんな光景を思い浮かべて、私はますます背中を丸めた。


どうしよう。

こんな気持ちでこのまま一人部屋にいるのは、しんどい。


ひざをかかえた姿勢のまま、床にごろんと横になると携帯電話が足に触れた。





少し考えた後、私は沢渡にメールを入れた。
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