手をのばす
「友達ってあの子のこと?沙耶さん」

「そう」

私は視線だけ下に落とした。


「まだ知り合ってそれほど経たないけれど、すごく仲良くなったの」

「もしかしてあの子とケンカでもした?それで江崎さん最近元気なかったの?」

ビールを飲み干してから、沢渡が聞いた。


「そういうわけじゃないんだけど」

私は言葉を濁した。


沢渡はカウンターの向こうのバーテンダーにビールのおかわりを注文してから、

「あれから何度も店に顔出してくれてさ、由紀子が冷たいんだー仕事ばっかりで、なんてぼやいていたよ。ほんと、仲いいんだね」

と笑った。

「えっ?」

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