手をのばす
「そっか、そうよね。私今回の仕事を一人でやったような気分になってたけど、もっと大きな目で見ればみんなで決算を乗り切ったとも言えるんだよね。一人ひとりこなしている仕事は違うかもしれないけれど、そうなんだよね」


思わず沢渡の方に向き直ってそう言った。


「仕事ってそんなもんでしょ。業種は違えど、中でやってることはそれほど変わらないと思うよ。結局人の集まりだしさ。なんて、俺ちょっと偉そう」

と沢渡は笑った。

「そっかー」

息をついて、私はカウンターに片肘をついてみる。



男の人と、こんな風に飲みながら楽しく会話をかわしている自分にも酔いそうだった。

心の底から湧き上がってくる、圧倒的な喜びを感じていた。



男の人?ふと自分に問う。



男だから、嬉しいの?


それとも、沢渡だから嬉しいの?
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