手をのばす
上司にうながされた女性は、

「あの、き、今日から一緒に働かせていただきます、田島沙耶です。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします」

と今にも消えそうに言って、ぺこりと頭を下げた。



それが、沙耶との出会いだった。



窓の外には桜のつぼみがいくつも、優しくふくらみはじめていた。


それは私の想いを、どこか象徴していたのかもしれない。
< 11 / 203 >

この作品をシェア

pagetop