手をのばす
月曜の朝、コピー室で突然沙耶にこんなことを言われた。

「なんか由紀子どうしたの?いいことでもあった?」



私たちは分担して、午後一で会議に使うプロジェクトの資料を大量にコピーしていた。

「え?どうして?」

コピー機からどんどん吐き出される資料を手に取りながら、尋ねた。


「んーん、なんとなくだけど。にこにこしてるしいつもより肌つやもいい感じだし」

「そっかな?そんなことないよ」

「もしかして化粧品変えた?」

もしそうなら私にも教えて、と言いたそうに沙耶が聞いた。


「特に何も・・・」

私はあいまいに答えた。


そう言いながら、考えていた。


今朝化粧をしながら頬に触れたとき、あれっと思った。

頬が柔らかい。


思わず鏡に近づくと、まだメイクが途中なのに顔全体がピンクがかって見える。

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