手をのばす
沙耶は職場に慣れないせいもあって、広いフロアの隅で小さくなっているような印象だった。



あまりトイレにも立たず、じっと机に座っていて、まるで気配を消しているみたいに見えた。


一年振りの新人に、興味津々の同僚たち。

沙耶の周りに集まり次々と話しかけていたけれど、彼女の反応は薄かった。


「そんな・・・」

「いえ・・・」

と小さな声で、一言二言答えるだけだった。

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