手をのばす
やがて沢渡が私の方を振り返り、目が合った。

じっと二人の様子に見入っていたので、私は恥ずかしくなり慌てて目をそらした。


「いらっしゃい。ごめん俺食材買い物に行ってたんだ」

「そうなんだ」

沢渡がやっとそばに来てくれても、なかなか目を合わせられない。

それでも普段どおりに振舞おうと顔を上げたとき、さっきの女性スタッフの視線とぶつかった。


「これから美容室行くところなんだー」

なんて沢渡と笑顔で話をしながらも、その女性の存在を目の端で意識していた。
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