手をのばす
その代わりに尋ねた。


「沙耶、沢渡くんのこと好きなの?」

「実はあれからけっこうあのお店に行っててね。私は直接の知り合いじゃなかったのに、すごく優しくしてくれるし、由紀子の同級生なら安心でしょ」

そんなので安心してもらいたくない。


「こんな気持ち初めてだから、どうしたらいいかわからないんだけど・・・。由紀子協力してくれる?ね?」


不安は的中してしまった。


もう私の「好き」は口に出すことができない。


発せなかった言葉は、私の体の奥底に澱のように積もるだけだ。
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