手をのばす
驚いて沙耶の横顔を見た。

目は沢渡の方をしっかりと見ているけれど、その表情は読めない。

沢渡も目をしばたかせていたものの、「え?どうしたの突然」と明るく答えた。


そんな二人のやり取りを見ていて、私はひどくおろおろしていた。


沙耶が沢渡のことを好きなら、彼女の有無はとても大事な確認事項なのはわかる。


そんなことは私も知りたいし聞きたい。


でもこの場に来て、初めて沢渡と交わす話がそれっていうのは、いくらなんでも唐突すぎる。


沙耶はじっと沢渡から目をそらさない。

ちゃんとした答えを待っているようだ。


その有無を言わせぬ雰囲気は、隣で見ていてもどこか異様だった。
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