手をのばす
沙耶が私に気づき、

「由紀子、そろそろ帰ろう」

その声にうながされ、私はゆっくり二人に近づいた。

「今日はお誘いありがとな。また飲もうよ」


屈託ない顔で沢渡はそう言い残し、背を向けた。


行きかう車のライトの光に見え隠れしながら、沢渡の背中は次第に見えなくなっていく。



沢渡は、沙耶のことをどう思っただろう。

次は二人でどう?なんて言われて、嬉しく思った?

もう闇にまぎれた沢渡に、そう問いかける。


「行こうよ」



呆けたように立ち尽くしていた私の腕を、沙耶は催促するようにつついた。
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