手をのばす
しばらく黙ったまま歩いていたけれど、我慢できず聞いた。


「どうだった?沢渡くんのこと誘えた?」

「うん。連絡先も交換できたし、お食事のこともいいよって言ってくれたの」

「そう、なんだ。よかったね」

「帰ったら早速メールしてみる」

沙耶はあっさりと言った。



無性に腹が立った。

沢渡とメールのやり取りをする楽しみを、簡単に手に入れた沙耶に。

簡単に食事の約束をした沙耶に。


私という橋渡しを利用して、いとも簡単に目的を果たす沙耶に。


嘘の笑みを浮かべる私の皮膚の中は、嫉妬で粟立っていた。
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