手をのばす
沸々と
ぼうっとしていると、すぐに二人の進展具合に考えがめぐってしまうので、それを振り切るように私は仕事に没頭した。


残業は進んで受けて、早く帰れそうなら手当たり次第

「何か手伝うことありませんか?」と聞いて回った。

そうすることで自然と沙耶といる時間を少し減らすことができた。


前ほど沢渡の店にも通っていない。


とにかく自分の体制を整えたかった。

今沢渡に会ったら、自分が何を口走るか分からない。

思わず本当の気持ちが、こぼれ落ちてしまうかもしれない。


今は、何も言っちゃいけないんだ。


今は。

でもきっといつか。


自分にそう言い聞かせて、いくつもの仕事をこなすことに専念した。
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