手をのばす
そんな私の態度を全く気にすることなく、沙耶は話し出した。

「私なんかにもすっごく優しくしてくれてね、気を使っていろいろ話をしてくれるし、はじめは緊張して全然話せなかったけれど、ちょっと経ったら私もいっぱい話せるようになったの。あ、でもね」


話がそこで一度途切れたので、私は沙耶の顔を見た。

「ちょっと怒られちゃった」

「どうして?」

「私なんか、って言うのよくないって」

足元がすうっと冷えてゆく。



それは沢渡が私に言ってくれたことと同じ。


それを聞いて、私は沢渡を好きだと確信できた。そのきっかけになった言葉だ。
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