手をのばす
「びっくりしたけど、嬉しかったなあ。ほんとにこの人いいかもって思っちゃった」

沙耶は無邪気にけらけらと言う。

それが私の神経を逆なでする。


いいかも、なんて言わないで。

そんな軽々しい気持ちなの?

そんなんで私に「協力して」と言ったの?

私の気持ちは、そんな中途半端なものじゃないのに。


その証拠に、今もこんなにも沙耶に嫉妬している。

この感情は、憎しみにも似ている。


「メールもまめにくれるし、もし付き合ったら安心して過ごせそうな人だよね。由紀子もそう思わない?」


そう言って沙耶は携帯電話を取り出した。

正面に座っている私からは、沙耶が携帯で何をしているのか見えない。

おそらく沢渡からのメールでもチェックしているんだろう。

テーブルの下で両手のこぶしをぐっと握り締めた。
< 148 / 203 >

この作品をシェア

pagetop