手をのばす


こんなの嫌だ。もうだめだ。


呪文のように繰り返していた。

いつか、なんて悠長なことを言っていられない。


体制が整う前に、自分を見失ってしまう。



このままでは、昔より私が私を嫌いになってしまう。

それだけはどうしても嫌だった。



私は息を切らして、たどり着いたのは沢渡の店だった。
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