手をのばす
不穏
更衣室で慌てて帰る準備をしていた。

せわしなくロッカーのドアを開けた。

今日は沢渡が休みで、いつもよりも早い時間に会える。

おいしいものをたくさん用意して、彼を待ちたかった。

待つ時間も、恋を実感できるから。

ブラウスのボタンをはずしている時、沙耶がひょっこり姿を見せた。


「由紀子、帰るの?」

「うん」

「今日は何か用事?」

「うん。ちょっとね」

私は曖昧な返事をした。


「最近付き合い悪いー。さてはオトコ?」


着替えの手を止めた。これは、チャンスかもしれない。


沢渡のことを話すための。
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