手をのばす
不倫の代償
ベッドの上で沢渡の体に腕をからませていた。

このまま眠りに落ちるのは、とても心地がよい。

なのに、沢渡は少し体をずらしてつぶやいた。

「俺、そろそろ帰ろうかな」

「えっ、泊まって行かないの?」

明日二人で食べようと朝ごはんの下ごしらえをしておいたのに。

「うん、ごめんな」

言った後すぐにベッドから下りた。


ここ最近、こんな感じだった。

やることやって、沢渡は謝りながら私の手をすり抜ける。


こうなった境目は、多分、私が質問した日からだったと思う。



”ねえ、私たち、付き合っているんだよね?”

暗い部屋に、私は一人取り残される。

一緒にいても、その時間が想像できてしまう。


だから、沢渡と一緒にいても、寂しい。

満たされない思いだけがここにある。

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