手をのばす
不安を滲ませた私の表情を見て沙耶は、

「大丈夫。どこに行ってもなんとかなるわ。例えあの人と一緒であってもそうでなくても」

と笑った。

そっと一言付け加えた。



「由紀子と出会ったから、私はもう大丈夫」

「沙耶」

「私、由紀子のこと好きだよ。恋愛感情にすっごく似てたと思う。って言ったら、ひいちゃう?」

私は首を何度も横に振った。


「今度いつか会うときには、ちゃんと友達として、会いに来るね」



そう呟いて、沙耶は私の頬に軽くキスをした。


優しくて、風みたいで、やわらかくて、その感触は、ずっとずっと忘れない。
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